その6 『岡本太郎がそこにいた』
存在の芸術家、岡本太郎と出会って人生が変わった人は数え切れないんじゃないだろうか。
知れば知るほど、おもしろい。
あまりに有名すぎる名言
『芸術は爆発だ』
生きれば生きるほど、『まったくです!太郎さん!』と呼びかけたくなる。
そして、妥協して(やっぱりあのとき、ああしてたら…)と悔やむたびに、
『一度でも引いたらダメなんだよ。
貫き通すんだ』
という声が聞こえる。
『まったくです…まったく…その通り…です…』
太郎さんは一貫して『僕はただの人間。みんなと変わらない』ということを言い続けていたと思う。
『やってみなきゃわからない。だから、やるんだよ』
『未熟? 未熟でいいじゃないか』
『みんなが出る杭になったら面白いじゃないか』
『下手でもいい。うまいものに魅力なんてないんだ。いいね、という当たり障りないものは芸術とは呼ばないんだ』
『人生即芸術だよ』
箴言だらけである。
いのちをひらいて生きること。
自分の思いをつかむこと、正直になること。
闘うことも辞さず、嫌われることにも臆さず。
そんなこと言ってたら、世の中から爪弾きにされちゃうよ。という声には、
『それならそれでいい』
好きなことに賭けたって食えなくては。との戸惑いには、
『食えなくたっていいじゃないか』
誤解されてしまいます。との嘆願には、
『誤解されないほうがおかしいんだ』
と、弱音やずるさの声すべてを、カウンターの一撃でマットに沈めてしまう岡本太郎。
『あなたは成功したからそう言えるんですよ』
さんざん聞かされ、うんざりして反論するのをやめてしまうのが人の性…
というところを、
『ふざけるな…!!!』
と烈火のごときエネルギーを放ち続けた岡本太郎。
コンプレックスなんて誰にだってある。
誰かが道を作ってくれるのを君は待っているべきじゃないんだ。
あれが足りない、これがない、そんなものは二の次なんだ。君がどうしたいか。それに賭けるよりほかにはなく、やろうとするからエネルギーが生まれるんだ…!
信念とその証明。
岡本太郎さんを知ってしまったら、心に住まわせるか、興味などない風に生きるか、ふたつにひとつしかないように思える。
こうだったらいいのにな。
と描く理想。
でも無理だな…
と諦めてしまうほうが、無論、簡単で。
でも、それはやっぱり寂しくて。虚しくて。
悩み・苦しみを超越するため、忘れるために宗教があり、心理学があり、趣味があるような世界そのものへ喧嘩を売り続けた、そんな漫画の主人公のような人が実在したという事実。
激しい憤り。生命への共感。
灼熱の焔と、暖かい灯火と。
『自分の中に毒を持て』
も勿論いいけど、美術評論や紀行文も素晴らしい。
『太陽の塔』
も勿論、語り継がれ、訪れる者ひきもきらぬ岡本太郎存在の証として建ち続けるだろうが、ちょっとしたオブジェ、彫刻も素敵だ。
『娘』さんとの関係、その精神、絵の遍歴、写真、書、対談…
『岡本太郎の世界』は生命感に満ちみち、原色のエネルギーで溢れ返っている。
ちなみに、僕がはじめて『岡本太郎』と出会ったのは、神奈川県生田緑地にある岡本太郎美術館に展示されていた一枚の絵だった。
抽象画を見て、震えが起きたのは初めてのことだった。
キャンバスに封じこめられた意思。
轟音が鳴っているようでもあった。
自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間"を捨てられるか (青春文庫)
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『 “生の営み” と書いて、“ アート ”と読む! 蒼天航路 』 - SOUL EAT!!!