『3月の終わりに冷たい花を』
”花だ、花がいい…”
そんな独白で始まる、
最強の、孤独なボクサーの物語
闘うことしか知らず、
リングの中でしか生きてゆくことのできない、獣の物語
『ZERO』
”花だ、花がいい…”
血にまみれた死闘の最中、繰り返し現れるヴィジョン、言葉。
強過ぎる。
ということの孤独。
花願う男の前に現れた、若き狂犬。
花に見たのは、散る夢か。
鮮烈な終わりを、散る花と見たか。
迫る最期の闘い。
花願う無敵の王者の行く末は…
血の花が美しく咲く、その詩情。
ふと差し挟まれる1カット、すこんとカラッと抜ける空気。
たった1カットに封じこめられた、無限と思われる茫漠の時間。
松本大洋、初期傑作。
獣と花の純粋詩。
3月の終わりに、
冷たい花を。