SOUL EAT!!!

ぐるぐる回る 風の時代がやってくる

『悪に身を染めるのは、堕落なのか、解放なのか』

 

男には守るべきものがあった。

家族があった。

 

愛する妻と息子、間もなく誕生する新しい命。

 

人生の、大きな節目となる、分岐点。

男は " 家族 " を選び、" よき父 " となることを選んだ。

 

迎えた50歳の誕生日。

男は余命わずかの病魔に冒されていることを知った。

 

妊娠中の妻、ハンデを背負った息子、新しく生まれてくる命。

 

" 父 " である男は、家族を想う。

妻に、息子に、父の顔を写真でしか知ることのできない第2子に、何が必要か。

何が残せるか。

 

金だ。

それも、莫大な、金だ。

 

男は、家族に、自分がこの世を去っても、問題なく、つつがなく、安心して暮らし続けていけるよう、大金を稼ぐことを決意する。

 

男は、ハイスクールで化学の教師をしていた。

安定はしているが、一家の暮らしを支えるだけで精一杯の稼ぎ。

あれやこれやで出て行くばかりで、足りない、金。

 

男には、特技があった。

化学。

その頭脳、卓越した能力はその世界においてトップクラス。

一介の平凡な教師と見えて、彼の能力は群を抜いていた。

 

男は決意する。

短期間で、金を稼ぐ。一生かかっても得ることのできない大金を、稼ぐ。

そのために、自分ができること。

 

麻薬をつくる。

 

ブレイキング・バッド SEASON 1 - COMPLETE BOX [Blu-ray]

 

海外TVドラマ『ブレイキング・バッド

 

「おっもしろいですよ!」

と薦められたものの、" シーズンなんとか "、毎回「そこで終わるの?」「引っ張るなー」

長い長い視聴の末の虚脱感。満足感というより、達成感。

がんばってよく見た。しかし、あまり記憶に残っていない。

という印象が強かった、海外TVドラマ。

 

しかし、「主演の役者さんが凄い」とも言う。

じゃあ、見てみるかと一巻を手に取った。

 

 

……本当に面白かった。

……本当に凄かった。

 

ちょっとレベルが高すぎるんではないだろうか。

というクオリティであった。

 

見事な脚本。

素晴らしいのは主演の俳優だけではない。出演者、みな、おそろしくレベルが高い。上手い、というのではない。その役、その人間そのもの。

 

しがない高校教師が、闇稼業に手を染める。

タイムリミットは数ヶ月。

 

意外性とサスペンス。

そこでグッと引きこまれるが、物語は主人公の変貌を描くだけでなく、取り巻く人々のドラマをも描く。

丹念に、丁寧に。

物語の進みは、だから、とてもゆっくりとしている。

だが、刻々と時は過ぎ、状況は大きく変化していく。

 

 

「面白いか?」

と聞かれたら、面白いよ、と答える。

しかし、観ながら、胃が痛くなる。

 

誰もがついている嘘。抱えている秘密。

男と女の「なんで、こう、うまくいかないんだ」すれ違い。

 

平凡な高校教師が麻薬王となっていく過程は確かに面白い。

" 悪 " の魅力がだんだんと溢れていくウォルター、どんな麻薬王になるのかと目が離せない。

 

しかし、胃が痛くなる。

人の心の弱さや狡さ、影や闇。

「ああ、そうだよな…」

我が身引き寄せ、酒の一杯でもやらなければ観ていられない。

しかし見応え充分であること確か。

つい観てしまう。

 

シングルモルト ウイスキー ラフロイグ 10年 750ml

 

ウィスキー片手に鑑賞するのが、よろしいかと。

大人のドラマであることだし。

ラッパのマークのあの匂い、

「えっ、これ美味いの…?」

しかしそれが美味いのだ、ラフロイグ

薬っぽい香りもまた芳醇と。化学教師ウォルターもきっと好むであろうと思われる。