『初期の黒』
「--って知ってます?」
と差し出されたカセットテープ。
「え。知らない」
曲名も書かれていない、練習用に録音したカセットテープを、" 激しい音楽が好きなら " とギター弾きの友人がくれたのが10数年前。
何の予備知識もなしに、聴いて、
……お、
おおおっ……!!!
あのときの感動、驚愕、未知の音楽に触れたときの喜びを忘れていない。
情報がないから、想像するしかなかった。
その音、その叫び、聞き取りにくいが、断片的に理解できるその詩。
本当に危険な、本気の、触れてはならない人たちの演奏だと思った。
血は滾った。叫びたくなった。
しかし恐怖した。怖かった。
「鬼気迫る」とはこのことか、と戦慄が走った。
カセットテープという「今時」な形態、何度も繰り返し再生されて劣化した音。
地下で蠢く " 凄い音楽 " にふさわしかった。
絶望と憤怒。黒い渦。血を吐くような叫び。意思失わぬ眼。
先日、新しいアルバムが発表された。
1曲目から、震え。
あのときの感じが、また。