『時間の花を取り戻すんだ』
灰色の男たちは売りつける。
「あなた、その時間、無駄にしてますね」
「もっと合理的に使いましょうよ」
「あなたのためなんです」
賢く生きる秘訣を授け、植え付け、奪い取る。
灰色の男たちに名前はない。記号がある。役割がある。
彼らは奪うことで生きる。目的があり、手段があり、達成のために生きるが、生きる理由を考えはしない。しかし死にたくはない。
" 何のために生きるのか "
奪うため。
" なぜ奪うのか "
生きるため。
" 生きて何をするのか "
糧を奪う。
" なぜ奪うのか "
奪わなくては生きてはいけない。
" 奪わなかったらどうなるのか "
それ以外に生きる術を知らない。
灰色の男たちは売りつける。
価値ある生の理念を売りつける。
しかし、価値ある生を生きてはいない。
それでも灰色の男たちは売り歩く。
延々と、命を永らえさせるために、売り歩く。
それが仕事だから。それが生きる術だから。
『魔』に浸蝕されてゆく人々、街。
灰色の男たちに立ち向かうのは、ひとりの少女。その名は、モモ。
てっきり、100年前とか、ずっと昔に書かれた物語とばかり思っていた。
ロマンティックな物語、警鐘鳴らす洞察の書、どう評価されているのかわからないが、きっと100年後も読まれているんだろうな。