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SOUL EAT!!!

歓び跳ねる、踊り狂う、炸裂する虹、そのかけらを一灯

『その夢は切なすぎる』

映画

 

恋をした。

 

結ばれた。

 

 

満ち満ち、あふれ出す喜び。

 

弾む心。

美しさばかり映すようになる瞳。

 

「愛している」

 

「愛されている」

 

完璧な世界。

 

 

恋をした。

 

ずっと一緒にいたいと思った。

 

 

ぬくもりを、匂いを、身体を、すべて丸ごと抱きしめて離さず、もう、ずっとこのまま。

ずっと一緒にいたいと思った。

 

愛する者を見出した喜び。幸せ。

守りたいと思う気持ち。

守られているという安心。

 

強さも弱さもひっくるめて、受け入れる。

強さも弱さも、どうしようもない癖も、愛おしく、抱きしめる。

 

時折の喧嘩や仲違い。

ごめんと謝ってみたり、謝られてみたり。

距離を置いたり、近づいてみたり。

 

「やっぱり一緒にいたかった」

「やっぱり一緒が一番幸せ」

 

距離を置いた分だけ、増す幸福感。

再確認。絆はより強く、堅く。

 

 

 

やがて来る反転。変質。

「どうして?」

「なんで…!?」

苦しみ、痛み、悲しみ、憎悪。

何故、何故、何故……

 

 

 

それは、" 彼女の夢 " というより、誰かを深く愛した人々、

これまでの、これからの、すべての " 誰かを深く愛し傷ついた人々の夢 " 

 

切なすぎる悪夢。

 

 

映画の終わりは、ひとつの夢が終わる時。

 

「奇妙な夢を見た」

 

目覚めて見回す現実世界。

 

「あれ、どんな夢だったっけ?」

 

思い出そうにも、断片、切れ端、おぼろに霞み消えてゆく幻影を掴むに似て。

 

 

その夢は、とても奇妙なカタチをした鍵。

 

「もう思い出したくはない」

 

と、海の底の底に沈めた、自分だけが知る秘密の小箱の封印を解いてしまう鍵。

 

暴かれる世界。

 

真実は、胸かきむしられる、切なさに溢れている。

狂い、叫び出しそうな悲しみに満ち溢れている。

 

 

それでも、

 

「愛した」

 

その想いの強さ、美しさに、心は呼応する。

 

 

「変な夢を見たな……」

 

起きてしばらくは妙な感覚に包まれているが、しばらくたつと、そんな夢を見たことも忘れてしまう。

 

しかし、どういうわけか、気分がよい。

 

次の曲がり角、出会う誰かの気配。

新しく何かが始まる気配。

 

その夢は、ひとつ、過去を終わらせる。

 

見つめ、認め、葬り、成仏。

 

儀式とも浄化とも作用する、魔術のような

" マルホランド・ドライブ "

切なすぎる夢に救われる。 

 

マルホランド・ドライブ [Blu-ray]