もはや古い法則など通用しない
獅子の門が開くという、運命的な、そんな日に。
アルチョムについて語りたい。
終末のロシアを救った英雄はどんな男だったのかを探りたい。
メトロシリーズ第2弾 " メトロ ラストライト "
前作メトロ 2033 ではまだ頼りなかったアルチョムも、もう立派な戦士。
第2弾 ラストライト では、人間たちの争いもより濃く描かれる。
主義・信条の違い、けっして埋まらない溝をどう埋めるのか。
いや、それは世界存亡の危機にあっても変わらない、人間の愚かな性なのだ。
いや、それでも手を取り合って、分かり合えるはずだ。
そんな展開になるのかと思ったら。
そんなテーマなのかと思ったら。
物語は垂直方向に、思いがけない方向に向かって進んでゆくのだった。
爽快なゲームではない。
スムーズな操作に快感を覚えることもない。
むしろ、野暮ったい。
グラフィックもひと昔前といった感じだし、
呼吸困難が怖くて探索もろくにできないし、
どうして萌えキャラの一人も出さないのかと愚痴りたくなるのだが、
なぜか。
またやりたい
と心惹かれる不思議なゲームだ。
アルチョムは言ってもまだひよっこだし、
異国の終末サバイブがそんな快適なわけないんだ、
と、前述した欠点のようなものが、どういうわけか「それがこのゲームのいいところなんだよ」と力説したいポイントになってくる奇妙な魅力がある。
主人公自身になって、その世界を生きるFPSゲーム。
束の間、ひとりのロシア人青年になって生きる。
朴訥な男だ。
人間らしい人間だ。
道中、アルチョムの人間性を現す、さりげないシーンがある。
物資も足りない世界で、工作大好きメカニックが作った手作りの車を使うアルチョム。
地下鉄のレールの上を、その車を駆って移動するチャプターがあるのだが、
「ここでお別れ」
という場面で、アルチョムは、その車体をぽんぽんと叩く。
労うように。感謝を告げるように。
いや、いい男だね、アルチョム。
もうしばらく君となってこの世界を生きようと思う。