『それでも君に会いにゆく、掴んだその手は2度と離さない』
何があっても、君の許へ。
2人で一緒に暮らすんだ。
【純愛】描いた作品として、7月7日に挙げるにこれほどふさわしい漫画はないだろう。
2人は互いの本当の姿を知らない。
仮想空間で知り合い、恋人となった。
男女が隔離され、階級によって貧富が定められた、独裁政治の支配する時代。
仮想と知りつつ、仮想であるからこそ、2人は本当の姿をさらけ出し、互いを認め、愛し合った。
会いたい。
でも会えない。
会えるはずがない。
会おうにも世界は完全に管理下に置かれ、恋愛どころか、接触すらすることができない。
でも会いたい。
本当の、生身の、君に会いたい。貴方に会いたい。
仮想空間で、彼は彼女を愛しまくる。
彼女は彼を求めまくる。
夢のような、本当の世界。本当の愛。
電源を落とせば、名前と出自と階級に縛られた現実が待っている。
現実のほうが、よほど芝居のよう。
彼女はその美貌と肉体と魅力を、おもちゃにされている。
下衆な男たちの欲望に、振り回され続けている。
彼は上から言われるままに職務をこなす一兵士。
血まみれの、尊厳などない、使い捨ての一兵士。
唯一の安らぎのとき。
仮想空間での、本来ありたかった自分で語り合い、睦み合う、ささやかな、ひと時。
時代は変わらないし、変えられない。
身分は変わらないし、変えられない。
だったら、せめて、夢の中だけでも。
現実は過酷で、泣きたくなるような、死にたくなるようなことばかりだけど、その夢には血が通ってる。
嬉しくて嬉しくて、踊りだしてしまいそうな歓びに満ち溢れている。
そこでだったら、本当のことが言える。
素直な自分でいられる。
現実は変わらないし、変えられないから、せめてこの夢だけをひと時の愉しみと、生きていけばいい。
仮想の世界と言えど、そんな風に出会えた、かけがえのない人と出会ったという幸せ。
滅多にあることじゃない。
だから。
それでいい。それだけでいい。満足する。
本当の君に、本当の貴方に、会って、2人で暮らすなんて、叶うはずがないんだから、余計なことは考えない。
それでいい。
それで…
…でも、やっぱり……会いたい……
本当の君と、貴方と、会いたい。
彼女は檻からの脱出を図り、
彼は彼女を救うため、命を賭ける。
ジャンルを超え、時代を超え、【純愛】描いた作品として読み継がれていくであろう、『狂四郎2030』
彼は彼女を救うため、命を賭けるが、彼女もまた闘う。
籠の中の鳥じゃない。
人間のどす黒さも、欲望の醜さも、弱さも。
下ネタ満載、でも " 下品 " じゃない。
会いたくて会いたくて、たまらなくて、やっと、やっとのことで、ほんの一瞬、同じ場所にいられた、それだけで胸がいっぱいになってしまう、切なさ、美しさ。
とても綺麗。