SOUL EAT!!!

ぐるぐる回る 風の時代がやってくる

『それでも君に会いにゆく、掴んだその手は2度と離さない』

 

何があっても、君の許へ。

 

2人で一緒に暮らすんだ。

 

 

【純愛】描いた作品として、7月7日に挙げるにこれほどふさわしい漫画はないだろう。

 

 

2人は互いの本当の姿を知らない。

仮想空間で知り合い、恋人となった。

男女が隔離され、階級によって貧富が定められた、独裁政治の支配する時代。

 

仮想と知りつつ、仮想であるからこそ、2人は本当の姿をさらけ出し、互いを認め、愛し合った。

 

会いたい。

 

でも会えない。

 

会えるはずがない。

 

会おうにも世界は完全に管理下に置かれ、恋愛どころか、接触すらすることができない。

 

でも会いたい。

 

本当の、生身の、君に会いたい。貴方に会いたい。

 

仮想空間で、彼は彼女を愛しまくる。

彼女は彼を求めまくる。

 

夢のような、本当の世界。本当の愛。

 

電源を落とせば、名前と出自と階級に縛られた現実が待っている。

現実のほうが、よほど芝居のよう。

 

彼女はその美貌と肉体と魅力を、おもちゃにされている。

下衆な男たちの欲望に、振り回され続けている。

 

彼は上から言われるままに職務をこなす一兵士。

血まみれの、尊厳などない、使い捨ての一兵士。

 

唯一の安らぎのとき。

仮想空間での、本来ありたかった自分で語り合い、睦み合う、ささやかな、ひと時。

 

時代は変わらないし、変えられない。

 

身分は変わらないし、変えられない。

 

だったら、せめて、夢の中だけでも。

現実は過酷で、泣きたくなるような、死にたくなるようなことばかりだけど、その夢には血が通ってる。

嬉しくて嬉しくて、踊りだしてしまいそうな歓びに満ち溢れている。

 

そこでだったら、本当のことが言える。

素直な自分でいられる。

 

現実は変わらないし、変えられないから、せめてこの夢だけをひと時の愉しみと、生きていけばいい。

 

仮想の世界と言えど、そんな風に出会えた、かけがえのない人と出会ったという幸せ。

滅多にあることじゃない。

 

だから。

 

それでいい。それだけでいい。満足する。

本当の君に、本当の貴方に、会って、2人で暮らすなんて、叶うはずがないんだから、余計なことは考えない。

それでいい。

それで…

 

 

…でも、やっぱり……会いたい……

 

本当の君と、貴方と、会いたい。

 

 

彼女は檻からの脱出を図り、

彼は彼女を救うため、命を賭ける。

 

狂四郎2030 14 (集英社文庫 と 20-37)

 

ジャンルを超え、時代を超え、【純愛】描いた作品として読み継がれていくであろう、『狂四郎2030』

 

彼は彼女を救うため、命を賭けるが、彼女もまた闘う。

籠の中の鳥じゃない。

 

人間のどす黒さも、欲望の醜さも、弱さも。

下ネタ満載、でも " 下品 " じゃない。

 

会いたくて会いたくて、たまらなくて、やっと、やっとのことで、ほんの一瞬、同じ場所にいられた、それだけで胸がいっぱいになってしまう、切なさ、美しさ。

 

とても綺麗。

 

狂四郎2030 全14巻セット (集英社文庫―コミック版)

狂四郎2030 全14巻セット (集英社文庫―コミック版)