67分の物語が、長い、冬の夜を終わらせる。 MONO " Hymn to the Immortal Wind "
MONO " Hymn to the Immortal Wind "
不死の風への讃歌
美しいアルバムである。
この上なく美しい、インストゥルメンタルミュージックである。
ひとり長い夜を抱え続ける人には、響く。
吹雪の中、ひとり歩き続けているような孤独な夜に響く。
守り通さねばならぬ誓いを胸に刻んでいる。
摂理を超えてでも会いに行かねばならぬ人がいる。
けっして消えない、消されることのない、大事な記憶が心臓に。
どんな試練が待ち受けていようと。
かならず。
1曲ずつ聴いても、どれもいいけれど、
" Ashs In The Snow " に始まり、" Everlasting Light " で終わる流れ。物語。
救われる。解放される。
どうしようもなく悲しく、切実に、痛い。
誰も理解する者のいない、孤独すぎて、天を仰ぐしかないような、ひとりの夜。
「不死の風への讃歌」と題された、美しい音楽を聴く。物語を生きる。
言葉のない、音だけの世界。
物語の、誰かの、心象風景。
重ね合わせる。
心が動く。
心の底のほうで、奥のほうで、少年は少女の手を取る。つないだ手はもう離さないと掴む。
そのとき、自分は少年の側か、少女の側か。
至福、祝福の光に包まれる大団円。
幾多の試練を乗り越えて、ひとりの夜を越えて、寒く凍えそうな雪の日々を越え。
67分間の夢を見る。