『花粉症が治ったのは“ 夢をかなえるゾウ ”のおかげだったか』
それは突然のことであった。
目がかゆい。
鼻水はだらだら。
くしゃみは止まらず。
身体もだるい。
『花粉症』とは無縁の暮らしを送っていた僕は、その状態を、まず、『長引く風邪』と捉えた。
そのころはまだ、市販の薬を飲むことが『手当て』と思っていたから、「これは効かない」「これは意外と鼻水止まる」といろいろ試しては、結局、イマイチ、だるい頭と身体を引きずるようにして「あー、かったるい…」と生きていた。
あまりに長引くものだから、病院へ行った。
血液検査をすると、『花粉症』であることが判明した。
スギ、ヒノキ、ブタクサ、カモガヤ、おまけにダストアレルギー。
一年まるまるアレルギー警報。
生死に至る病ではないが、まあ、とにかく、うっとうしい。
ケータイ、財布に加えて、点鼻薬が毎日持ち歩く必需品となった。
当時、僕は仕事を辞め、時間を持て余していた。
さて次は何をしよう。
と考えている頃、仲良くしている後輩から、
『たくましい肉体をつくるためのレシピ』
をプレゼントしてもらった。
『見せる』ための筋肉ではなく、実用的な『使える』筋肉。
『使える』身体を作るための、トレーニングスケジュールである。
『ドラゴンボール』に出てくる、孫悟空を神と崇め、幼いころより身体を鍛え、野山を走り回り、生後間もなく、ハイハイで町を徘徊したという伝説を持つ彼は、気のいい奴で、
「ちょっと体鍛え直さないとなー」
という僕のつぶやきに、素早くアイディアを提供してくれたのだ。
僕は彼の作ってくれたメニューを淡々とこなし続けた。
何も特別なことはない。
ごく普通の、やろうと思えば誰でもできる筋力トレーニングだった。
だがやはり最初はきつい。
心折れることなく進められたのは、日に日に変わっていく自分の肉体がおもしろかったことと、
こんな風になってきた。と後輩に報告するのが楽しみになっていたからだ。
3ヶ月もすると、それなりに『たくましい身体』ができてきた。
その辺りで気づいたことがある。
水が美味い。
鍛えたあとに流し入れる水は、文字通り、全身に染み渡るようだ。
意識せずとも、身体が欲するもの、がわかってくるようになった。
気付いたら、花粉に反応しない自分になっていた。
要は、デトックス、だったのだろう。
まずは身体の毒素の部分を洗い流し、身体の求めるものを入れていく。
健康食品である、無農薬である、と気にしなくても、自然と身体は自然なものを欲するようになる。
健康な『体』
というよりも、
健康な『心身』
『心』と『身体』を『ひとつ』と捉える在り方が『自然』なこと。
を理解するようになった。
心を変えれば、行動が変わり、体も変わる。
体を変えれば、思考や想い、心の向きも変わってゆく。
なぜ花粉症が消えたのか、その原因と最も効果的な方法を明確にお伝えできないのが、残念だ。
だが、このケースに限っては、汗を流し、毒素を流し、大掃除のように、身体に溜まった余分なあれこれを排出したこと、デトックスが要だったのだろう。
だが、そのパートナー、トレーナーとして愉快な後輩がいてくれたことも、重要な要素ではなかったか。
『おもしろい!』『楽しい!』と、きついメニューをこなせたのは、彼との対話がなければ続けられなかった。
デトックスと、楽しさを持続させるモチベーション。
毒素排出ならヨガもいいだろうし、毎日ランニングしてみる。ウォーキングしてみる。でもいいだろう。
だがそこに、
あの人への熱い想いとか、
彼女を抱きしめるにふさわしい肉体を!
とか、何でもよいのだが、理想の自分を思い描き、近づけていくことを楽しめるモチベーションがあると良いと思う。
花粉症って、
もう!めんどくさい!
うっとうしい!どうにかならんのか!
十分意識したら、
まあ、それは置いといて。
理想の自分を思い描いたほうが効果的。
そのために、身体を使ってできること。
続けることが、ちょっと面倒くさそうで、でも持続できたら、『変わってるだろうな』と思えるもの。
人間が『変わる』ことは、実はとても簡単なことで、でも、『思って』いるだけだと効果は薄い。
ふだん無意識に考えていること、泡沫のごとく浮かび上がっては消えていく思考。
『こうなったらいいな』の美しい泡だけが、あなたを守り、導いてくれる目印となってくれるか。
というと、そんなバブルフィーバーの中で、『考え』『想い』は、それがどんなに美しく正しくあろうと、ただの泡にすぎない。
だから、行動してしまう。
目に見える、体感できる、『身体』に関わることをする。
理想へと近づく旅路が楽しくないわけがない。
変わっていく心身を楽しんでいる内、花粉症は治っているかもしれない。治らなくても、季節が去っていることは期待できる。
最近読んで、
『うわっ、やっぱおもしろいな!』
と拍手喝采した、『夢をかなえるゾウ3』
どうしようもない主人公とどうしようもない神様の掛け合いが、もう、面白いのだが、『自己啓発』の『実用書』としての機能もきちんと備えている。
有用な情報の丁寧かつ真摯な整理。
笑いながら読んでいるうちに、これならできる、こうしてみようかな、とアイディアが湧いてくる。
春は花粉症の季節である。
そして、何かをはじめるにふさわしい季節である。
愉快なパートナーや、仲間や、ガイドを得て、
今までとは違う何かをはじめるにふさわしい時である。
花粉症に限らず、
うっとうしく、わずらわしい症状を抱えているいないに限らず、
何かをはじめてみたとき、そのうっとうしさやわずらわしさが、いつの間にか消えている。
そのくらいの小さな奇跡、誰にだって起こりうる。