その3 『魔法世界の扉を開く " BASTARD!!" 』
色鮮やかで、胸躍る、魔法世界の物語。
怪物、魔物の大胆にして緻密な絵。
『詠唱』により発動する魔法のかっこよさ。
ダークシュナイダーという破天荒なキャラクター。
登場する女性のかわいらしさ、美しさ。
そして、何よりも、何よりも。そのエロさ。
(好きであると公言したために、あいつはエロい、と嗤われることになった11歳の思い出。それゆえにまた秘密の大事な宝物ともなった)
ダークシュナイダーを唯一手玉に取れる、少女マリア、ヨーコ。
清楚、貞節、一途のシーラ姫。
褐色のエルフ、ダークシュナイダーの『娘』にして『恋人』、雷帝・アーシェス・ネイ。
ネイの忠実な部下、勝気な乙女、カイ・ハーン。
『女』を武器にすることもいとわぬ慈愛の娘、シーン・ハリ。
皆、魅力的である。
ひそかにネイを慕う、剛毅なサムライ・マスター、ガラ。
かつてのダークシュナイダーの右腕にして、敵として邪神復活を目論む氷の貴公子、
カル=ス。
不気味で奇妙に愛らしい魔導師、アビゲイル。
男たちもそれぞれ魅力的である。
第2部『地獄の鎮魂歌編』において登場するサムライたち。
魔戦将軍たちのカッコよさ。
『BASTARD!!』は読んでいて愉しい。
世界のあちこちに散りばめられた作者の過剰な愛に、つい頬が緩んでしまう。
剣と魔法の物語。
西洋、中世的世界観のファンタジー作品の傑作は数あれど、『BASTARD!!』には、唯一無二の輝きがある。
膨張してゆく物語は、もはやどこに辿り着くのかわからない。
『作品』としての評価はまだつけられないだろう。
それでも、何度も読み返したくなるのは、やはり、『かっこよさと可愛さとおぞましさ』を表現する絵の力がずば抜けているからだ。
魔法を発動させるための『詠唱』描写、化物・魔物の造形が、のちのファンタジー作品にどれだけ影響を与えたか。
デタラメすぎる演出や、コマ間の手書き作者コメントも含めて、『BASTARD!!』
すこん、と抜けた青い空のような。
いっちょやってみるか。と勇気まで湧いてくるような。
オリジナリティ突出の稀有な漫画である。