『もっとも奇妙な復讐映画 / 冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』
『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』
レンタルバージョンのジャケ、キャッチコピーの、
" 記憶を失くした男に復讐の意味はあるのかーー "
" 「約束」と「絆」を貫く男たちのハードボイルドアクション "
まさに、その通りの映画である。
『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』
その邦題にロマンティシズムを感じる方は、もう、観るべきである。
キャッチコピー、タイトルに偽りなし。
まさに、そういう映画。
何者かに襲撃された娘とその家族。
夫と子供を奪われた彼女は、父に犯人への復讐を頼む。
年老い、今ではシェフとして生計を立てているが、
男もまた、かつてはその道で生きてきた男であった。
しかし。
男は、かつての戦いの代償として、脳に傷を負っている。
記憶が消えていってしまう。
何のために戦うのかも、彼は忘れていってしまう。
誰に復讐するのかも、忘れてしまう。
その復讐。意味はあるのか?
そして、そこに、もうひとつのストーリーが加わる。
3人の殺し屋である。
これが、濃い。
男に雇われ、彼らはその復讐に力を貸すのだが、雇い主は彼らを雇ったことすら忘れてしまう。
騙すのは容易であり、わざわざ、リスクの高い仕事に体を張る必要もない。
人生を賭けるメリットなどあろうはずがない。
成功したとしても、雇い主は、それすら忘れるのだ。
" プロ "ならば、けっして引き受けない仕事。
だが、彼らは、" プロ " である前に、" 男 " なのだ。
" 「約束」と「絆」を貫く男たちのハードボイルドアクション "
彼らは約束をしたのだ。
雇い主は忘れてしまおうが、束の間のその交流に、彼らは絆を感じたのだ。
そして、彼らは、命を差し出す。死地へ赴く。
微笑さえ浮かべて。
……これを、カッコイイと言わなかったら、何がカッコイイと言うのだろうか。
タイトルもそうだが、男たちの友情、信頼、熱さ…。
クサくて観てられない、興味ない。
しかし、そんな人にも「観てみたら」と薦めたくなるのは、
斬新な映像美。
映画でしかできない表現。体験。
が、あるからだ。
3人の男たちの最後の戦いひとつ取っても、
よくあんなの思いついたな…!
と、まず発想に驚く。
晴天の下、だだっ広い空間に、ごろごろ転がりはじめる巨大な立方体。
あんな銃撃シーン、観たことない。
「しかし、この映画……詰め込みすぎなんじゃ……? でも、でも、なんだか好きなんだよね!」
な『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』
誰をやるのか、なぜ殺すのかもわからなくなってしまう復讐者と、
約束は必ず果たす、と " 信 " を貫く男たち。
もっとも奇妙で、胸が熱くなる、復讐映画。